「秩序紊乱」(大杉栄) Sakae Osugi

from Sakae Osugi's 「秩序紊乱」

"僕らは、すでに幾度か、いわゆる「秩序」を「紊乱」した。また幾度かいわゆる「朝憲」を「紊乱」した。そして今また、本紙(平民新聞)の第一号によっていわゆる「安寧秩序」を「紊乱」した。

「秩序」とは何ぞや。またその「紊乱」とは何ぞや。僕らはただ、僕ら自身の苦き生活の経験によって、その真実を知る。
人類の多数が、少数怠惰者の飽くなき貪婪と驕慢と痴情とを満足せしめんがために、刻苦して労働する。これすなわち「秩序」である。


人類の多数が、物質的生活と精神的生活との合理的発達に必要なるあらゆる条件を奪われ、科学的研究や芸術的創造によって得られた享楽を夢にだも知らざる、その日稼ぎの駄獣的生活に堕す。これすなわち「秩序」である。

人類の多 数が、あらゆる奢侈品や必要品の堆く積みこまれたる倉庫の前に、あるいは餓死せんとし、あるいは凍死せんとする。これすなわち「秩序」である。

人類の多数が、男は機械のごとく働き、女は大道に淫をひさぎ、子は栄養不良のために斃る。これすなわち「秩序」である。

雇主の貪欲なる怠慢のために、あるいは機械の破裂や、あるいはガスの爆発や、あるいはまた土崩れや岩崩れの下に、毎年数千数万の生命を失う。これすなわち「秩序」である。

人と人との、国と国との、絶えざる戦争。海に、山に、空に、轟く鉄砲。田園の荒廃。幾世紀かの間の幾多の膏血の累積より成る富の破壊。数万、数十万、もしくは数百万の若き生命の犠牲。これすなわち「秩序」である。

しかしてついに、鉄と 鞭とによって維持さるる、動機と感情と思想と行為との束縛。したがってその屈従。これすなわち「秩序」である。

しからば「秩序」の「紊乱」とは何ぞや。

あらゆる鉄鎖と障害物とを破毀しつつ、さらによき現在と将来とを獲得せんがために、この堪うべからざる「秩序」に反逆する。これすなわち「秩序」の「紊乱」である。

過去一切の祝聖されたる価値の転覆。新しき思想と新しき事実との大胆なる創造。これすなわち「秩序」の「紊乱」である。
かの「秩序」のためにほとんど死せんとしあるいはほとんど死すべかりし生命を、この新しき思想と事実とに献げて、まさに来たらんとする社会的大革命への道を拓く。これすなわち「秩序」の「紊乱」である。

真に自己のためなると同 時に、また他の同類のためなる、もっとも美わしき激情の爆発。もっとも大いなる献身。もっとも崇高なる人類愛の発現。これすなわち「秩序」の「紊乱」である。

ああ、僕らはついに、生涯を通じてこの「秩序」の下に蠢動しつつ、その「紊乱」に従わなければならぬ。「秩序」は僕らの死であり、その「紊乱」は僕らの真の生である。"
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